持続可能な保護活動への挑戦 就労継続支援B型とのハイブリッド運営

冒険の心得

動物保護施設、特に猫や犬の保護活動は、その運営の多くをボランティアの熱意と寄付金に依存しています。しかし、この不安定な仕組みは、活動維持の面で非常に不安定です。

この課題を乗り越え、保護活動を安定的に継続させるための新しい仕組みとして、「就労継続支援B型事業」と組み合わせたハイブリッド型の運営モデルは、解決策となりうるのでしょうか。もちを迎え入れた施設がこの「就労継続支援B型事業」と組み合わせた施設でした。このモデルは、動物たちのケアに必要な安定した人的リソースを確保しつつ、働くことに困難を抱える人々にも社会的な役割と工賃を提供する、動物・福祉・社会の全てにメリットがある「三方よし」の形を実現しています。今回は、この革新的な運営方法の仕組みと、その効果、そして見過ごされがちな課題を解説します。

「就労継続支援B型」の仕組み

保護施設の安定運営を可能にする根幹にあるのが、国の福祉制度である「就労継続支援B型事業」*です。

就労継続支援事業とは

「就労継続支援事業」は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つです。通常の企業で働くことが難しい障害や難病を持つ方々に対し、働く場所と機会を提供することを目的としています。勉強不足で、この「就労継続支援事業」について、もちを迎え入れるまでは全く知りませんでした💦

この事業にはA型(雇用型)とB型(非雇用型)があり、保護施設と連携することが多いのはB型(非雇用型)です。

B型(非雇用型)の特徴と経済的基盤

非雇用型: 事業所と利用者の間に雇用契約を結ばないため、利用者は体調やペースに合わせて、比較的自由に働く時間や日数を選ぶことができます。

工賃の支払い: 支払われるのは給与ではなく「工賃(こうちん)」です。この工賃は、利用者が行った作業の成果に応じて支払われます。

行政からの給付金: B型事業所は、利用者の受け入れ人数や活動実績に応じて、行政から「訓練等給付費」を受け取ります。この給付金が、主に事業所の運営費(人件費、家賃など)の根幹を支え、保護施設の経済的な不安定さを解消します。

ハイブリッドモデル:保護施設とB型事業所の具体的な連携

B型事業所が保護施設の運営を担うことによって、ボランティアに依存しない、持続可能な運営体制が構築されます。

安定した人件費とスタッフの確保

このモデルの最大の利点は、安定した人的リソースを確保できる点です。行政からの給付金で事業所の運営費が支えられるため、労働力がボランティアの熱意や寄付額に左右されず、安定して施設管理に必要なスタッフを確保できます。

保護施設で行われる具体的な「作業」

B型事業所の利用者が保護施設で行う作業は、動物の保護活動に直接貢献し、利用者の特性に合った作業が中心となります。

動物の世話: 施設の清掃、給餌、水換え、健康状態のチェック記録など、手順が明確で反復性のある作業が中心です。(直接的な医療行為は含みません。)

環境整備: トイレの管理、施設の消毒、洗濯、備品の整理整頓といった、動物がストレスなく過ごすための環境維持。

付帯事業: 保護動物関連グッズの製作や梱包、ネット販売の準備など、工賃を得るための確実な成果に繋がりやすい作業も行われます。

ハイブリッドモデルが抱えるデメリットと構造的課題

就労継続支援B型との連携モデルは持続可能性を高めますが、その運営には無視できない課題も存在します。

工賃の低さと運営の限界

医療費は別枠: B型事業所の給付金は、主に「訓練」のための人件費や運営費に充てられます。そのため、高額になりがちな医療費、フード代、譲渡推進費といった保護活動のコア費用は、引き続き寄付や自前の資金調達に頼る必要があります。運営の安定化は主に「人件費の低減」に限定されています。

工賃の低さ: 支払われる工賃は最低賃金を大きく下回るため(全国平均で月額1万円~2万円程度)、利用者の生活を支えるには十分とは言い難い現状があります。

福祉と動物保護の専門性の衝突

福祉の優先: B型事業所は、利用者の訓練と安全を最優先にする義務があります。そのため、作業内容が「動物福祉の理想」よりも「福祉的な制約」に影響される可能性があります。

医療判断は病院へ委託: 専門的な医療判断や高度な動物看護は、利用者が行う作業範囲外です。通常、保護施設では獣医師や動物看護師を常勤で雇用するのではなく、連携する動物病院へ委託するのが一般的です。しかし、動物を病院へ連れて行く搬送費用や診察費は、施設側の大きな負担として残ります。

結局は…保護猫施設の民間運営は困難

このB型事業所は、人件費の穴埋めができてもその他の運営費は施設でなんとかしなければならないということですね。保護活動そのものに対する費用は、付帯事業でどれだけ補填できるかにかかっています。この部分をどれだけ安定的にできるか。
これまた簡単ではないので保護猫施設の民間運営は、困難と言わざるをえないというのが、猫おばさん的考察です。

まとめ

就労継続支援B型との連携モデルは、保護活動に安定した人的リソースと福祉的視点をもたらす画期的な方法です。しかし、この仕組みは医療費などの核心的な資金問題を解決するものではないので、やはり柱となる事業なしには継続運営は難しいと思います。とはいえ、活動の継続性の一つのヒントになりえるのではと思います。

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