イギリスで起きた、5年間行方不明だった猫のパーシーがマイクロチップをきっかけに生還した奇跡のニュース。このニュースは、私たちに「マイクロチップの重要性」を認識させました。でも、一方で「日本でも同じような奇跡は起きるのか」という疑問も浮かびます。
今回は、パーシーの事件から派生して、世界各国のマイクロチップの制度の違いと、日本における「身分証明」の現状をまとめます。
5年という歳月を繋いだ「一生外れない」名前の重み
パーシーが発見されたのは、新しい飼い主が「歯科治療」のために彼を病院へ連れて行き、チップの登録情報を書き換えようとしたことがきっかけでした。野良だと思っていて、家にあげるタイミングで動物病院で診察してもらっていれば、そこで気づきそうなのにって思いますよね。誤解のないようにパーシーのニュース記事を読んでほしいのですが、イギリスの場合はデーターベースが一元化されていないため、チップをスキャンしたとて登録情報を探し出せない場合があるそうです。
ここから学べる最大の教訓は、マイクロチップが「一生外れない身分証明書」であるという点です。首輪や迷子札は、脱走時のパニック、事故での破損、あるいは第三者によって意図的に外されてしまう可能性があります。しかし、体内に埋め込まれたチップは、今回のような5年という長い空白期間があっても、その子のアイデンティティを証明し続け、元の家族へと繋ぐ「唯一の糸」となりました。
なぜ病院で判明したのか?イギリスと日本の「チェック体制」の差
今回のニュースで特筆すべきは、歯科治療の際に「チップの書き換え申請」が行われた点です。イギリスでは獣医師に全頭スキャンの義務はありませんが、飼い主が変わる際の「keepership(所有権)」の変更手続きには厳格なプロセスがあります。
イギリスの仕組み: 管理団体「Petlog」は、情報の変更申請があった際、必ず元の登録者に確認の連絡を入れます。この「逆引き」の仕組みがあったからこそ、パーシーの生存が発覚しました。
日本の現状: 日本の環境省データベースでも同様に、名義変更には「旧所有者の承諾」や「暗証番号」が必要です。勝手に情報を書き換えることはできないため、保護した人が「自分の猫にしたい」と登録しようとした時点で、元の飼い主に繋がる可能性が極めて高いのです。
世界のマイクロチップ事情:なぜ「埋め込み」がスタンダードなのか
世界各国で動物の登録制度は異なりますが、手法によってその信頼性は大きく変わります。
韓国:韓国では法律(動物保護法)により犬の登録は義務化されており、「埋め込み型」のほかに首輪につける「外付け型(電子タグ)」も選べます。しかし、外付け型は「外れる」「失くす」「捨てられる際に外される」というリスクを排除できません。そのため、長期的な個体識別の信頼性に欠け、現在では韓国国内でも埋め込み型への一本化が強く推奨されています。※注:猫については現在「登録義務の対象外」です。一部の自治体で試験運用されていますが、猫にチップを入れる場合は、脱落リスクのない埋め込み型を選択するのが世界的な常識です。
イギリス・EU諸国:法的な強制力 イギリスでは2024年6月から、20週齢以上のすべての猫にチップ装着が義務付けられました。装着していない飼い主には最大500ポンド(約10万円)の罰金が科せられるほど、国を挙げて「迷子猫ゼロ」を目指しています。
アメリカ:イギリス等とは違い、装着の要否は州や自治体の条例、あるいは譲渡元のシェルターの規定に委ねられており、全米一律の法的強制力がないのが現状です。多くのシェルターでは譲渡時の条件として装着を義務付けていますが、一般の飼い主が装着するかどうかは「任意」であるケースが多く、これが装着プロセスのバラつきや、データベースへの未登録・情報の放置を招く一因となっています。
ちなみに、全米獣医師会(AVMA)が53のシェルターで行った大規模調査によると、チップが入っていない猫が飼い主の元へ戻れる確率はわずか1.8%。対して、チップが入っている猫は38.5%と、約20倍もの差があるというデータが出ています。
【要注意】マイクロチップと「GPS」は全くの別物
ここで、最も多い誤解を解いておかなければなりません。マイクロチップにはGPS(位置情報追跡)機能は一切ありません。
マイクロチップ(身元証明): 電池不要で半永久的に機能します。スキャナーをかざした時に「15桁の番号」を返すだけの受動的なデバイスです。
GPSトラッカー(現在地追跡): 人工衛星の電波を利用して、リアルタイムで場所を特定します。電池が必要で、サイズも大きく、首輪ごと外れるリスクがあります。
※チップはGPSを混同されている方が多いので、一応整理しておきました。
まとめ
日本は2022年6月から、公的なデータベース(環境省)への一本化が完了しています。かつてのように「どこに登録したか分からない」という混乱は解消されました。でも、どれほど制度が整っていても、登録した住所や電話番号が古ければ再会は叶いません。具体的に「どうやって登録を最新に保つのか」という手順や、「健康への影響やMRI検査への不安」安全性について(わたしの懸念事項でもあります)、今後深く掘り下げていくつもりです。

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