雑誌に出てくるような開放的な住まいは、人間にとっては掃除がしやすく、視覚的な広さを感じられる魅力的な空間に見えます。しかし、この「効率的で開かれた間取り」が、実は人間にとっても猫にとっても「落ち着かない家」の原因になっていることが少なくありません。
今回は、猫を不安にさせる部屋について深掘りしていきます。
「開かれすぎた空間」という恐怖
現代の住宅設計において、もっとも贅沢とされるのは「開放感」です。高い天井、広いリビング、視線を遮る壁を極限まで減らしたオープンな間取り。しかし、野生の血を色濃く残す猫にとって、この「開かれすぎた空間」は、実は「捕食者から見つかりやすいリスクの高い場所」と認識されてしまうことがあります。
猫には、背後や頭上を守りたいという強い本能があります。壁に囲まれた狭い場所を好むのは、そこが物理的に安全だからです。一方で、部屋の真ん中に大きなソファがあるだけの広々としたリビングは、猫からすれば「四方八方から狙われている広野」に立たされているような心細さを感じさせることがあります。
特に、逃げ道や隠れ場所が計算されていない開放的な間取りは、猫を常に緊張状態に置きます。この「開放感の弊害」を解消するには、インテリアの美しさを損なわず、猫にだけわかる「隠れ家」を作ってあげることが重要です。
視線が突き抜ける「窓」と「ドア」の配置ミス
猫にとって「外が見える窓」は最高のエンターテインメントですが、配置を間違えると一転して「脅威」になります。
よくあるミスが、地面まである大きな「掃き出し窓」を、通りに面した場所に設置することです。外を歩く知らない人、走り去る車、あるいは野良猫やカラス。それらが自分のパーソナルスペース(家の中)から丸見えで、かつ自分も外から丸見えであるという状況は、猫に強い防衛本能を強いてしまいます。
また、部屋の入り口(ドア)の配置も重要です。 「入り口から部屋の奥まで視線が一直線に突き抜ける間取り」は、猫がもっとも落ち着かないパターンです。部屋のどこにいても、ドアが開いた瞬間に自分の姿が晒されてしまうため、深い眠りにつきにくくなります。
設計的には、視線の「抜け」を作る一方で、猫が隠れながら外を観察できる「ブラインドスポット」を意識的に配置する必要があります。
「廊下」の再評価
最近の家づくりでは「廊下は無駄なスペース」として排除され、LDKから直接寝室や子供部屋につながる間取りが一般的です。しかし、実際に住んでみてから「失敗した」と感じる人が意外に多いポイントでもあります。
まず挙げられるのが「音」の問題です。廊下がないということは、部屋と部屋を仕切る「空気の層」がないということです。LDKのテレビの音やキッチンの作業音が個室へダイレクトに響き、逆に個室での話し声や物音もLDKへ筒抜けになります。やってみて初めて「失敗だった」と気づく施主も多いこの問題。
また、猫との暮らしにおいて、廊下には「全力ダッシュができる直線コース」という重要な役割があります。 リビングは家具や家電、ラグなどが置かれ、猫が全速力で走れる直線距離を確保するのは意外と難しいものです。一方で、障害物のない真っ直ぐな廊下は、猫にとって最高の運動スペースになります。
朝方や夜中に突然スイッチが入って走り回る際、廊下を猛スピードで駆け抜け、壁を蹴ってターンする。(我が家のくもの場合ですけど💦)これは猫本来の身体能力を発揮できる、彼らにとっての貴重な「陸上トラック」です。
廊下を削ってしまうことは、静かな環境を損なうだけでなく、猫からこの直線運動の楽しみを奪ってしまうことにもなりかねません。我が家の猫を観察していても、廊下があることで運動のバリエーションが確実に増えていると感じます。「廊下はあると良い」というのは、実生活の利便性と、猫の運動欲求の両面から非常に理にかなった選択なのです。
家具の配置で作る「パーソナルスペース」
では、すでに完成してしまった「開かれすぎた間取り」をどう改善すればいいのでしょうか。鍵となるのは、家具の配置による「視線の遮断」です。
「隠れ家」の多点配置 部屋の四隅のうち、少なくとも二箇所以上には「猫の体がすっぽり隠れる場所」を確保してください。これは専用の用品でなくても、本棚の下段を空ける、あるいはソファと壁の間にあえて少しの隙間を作るといった工夫で十分です。
家具による「ゾーニング」 広いリビングであれば、シェルフやパーテーションを使い、猫が「壁沿いに移動できるルート」を確保してあげましょう。部屋の真ん中を堂々と横切らなくても、家具の裏や陰を通って部屋を移動できるレイアウトが理想的です。
そして「行き止まり」を作らないこと。逃げ場がないことは猫にとって最大の不安要素です。猫が通るルートには必ず出口を用意してあげると、追い詰められる感覚がなくなり、精神的に安定します。
まとめ
猫にとっての良い間取りとは、単に「広い」ことや「キャットタワーがある」ことではありません。自分の身を守りながら、適度に外の世界と繋がり、静かに眠れる「選択肢」が用意されていることです。あなたの家のリビング、猫の目線から見たら、広すぎる野原になっていませんか? 今日から少しだけ家具の位置を動かして、猫専用の「隠れ家」を作ってあげてください。

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