画家・藤田嗣治と猫

猫様との暮らし

「エコール・ド・パリ」を代表する画家の一人、藤田嗣治(レオナール・フジタ)。

前回の記事を書く中で、衝撃的な写真を発見しました。それはこの写真。

ドラ・カルムス《猫を肩にのせる藤田嗣治》藤田嗣治 生誕140周年記念特設サイトより

昔の方なのに古さを感じさせない斬新さと猫様との組み合わせ。猫が大好きだというのが本当に伝わってくるこのまなざしに衝撃を受け、どういう方なのか調べてみようと思いました。

彼の作品といえば、独特な「乳白色の肌」とその中に描かれた美しい猫たちの姿を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。(なーんて、私はこの方まだ全然知らないんですけどね(笑))

藤田は、生涯にわたって猫を愛し、描き続けました。彼にとって猫は、人生の苦楽を共にした伴侶であり、芸術的インスピレーションの源でした。彼の作品に息づく猫たちは、藤田の魂そのものを映し出しているとも言われています。

運命的な出会いと「乳白色の肌」

1913年、若き藤田嗣治は画家として成功を夢見てパリへ渡ります。しかし、彼の描く日本画は当時の西洋画壇で全く評価されず、貧困と孤独の中で苦闘する日々が続きました。

そんな孤独なアトリエに、一匹の猫が姿を現します。藤田はその猫を保護し、共に生活を始めました。この出会いが、藤田の人生と芸術を大きく変える運命的な転機となります。彼は、その猫をモデルに絵を描き始め、猫のしなやかな動きや毛並みの柔らかさを表現するために、独自の絵画技法を模索するようになりました。

そして生まれたのが、「乳白色の肌」と呼ばれる、滑らかで透明感のある独特な質感です。この技法は、キャンバスにタルク(滑石)を混ぜた絵の具を塗ることで、まるで陶器のような光沢と、ベルベットのようなマットな質感を両立させるものでした。この技法は、猫の繊細な毛並みや神秘的な雰囲気を完璧に捉え、見る者を魅了しました。

1920年代に入り、藤田は猫の絵でパリの画壇に旋風を巻き起こします。彼の作品は絶賛され、一躍時の人となりました。猫との出会いが、彼の芸術的才能を開花させ、成功へと導いたのです。猫様は、藤田の人生を救い、芸術を創造するための「ミューズ(女神)」だったと言えるでしょう。

藤田と猫の生活:愛情あふれるエピソード

藤田嗣治の猫への愛情は、単に作品の中だけに留まりませんでした。彼の日常は、常に猫とともにあり、数々の心温まるエピソードが残されています。

藤田はパリ郊外のアトリエで、たくさんの猫たちと暮らしていました。彼は猫たちを溺愛し、まるで人間のように接しました。猫のために専用の小さな家を建て、猫が自由に出入りできるよう、ドアに猫用の小さな穴を開ける工夫まで施していたと言います。ペットドアを先取りしてたんですね(笑)

貧しい時代、藤田自身が食べるものにも困ることがあっても、猫たちには上質なミルクや魚を与え、時には自分の食事を猫に譲ることもありました。猫飼いあるあるですよね。猫様の方が良い食べ物、良い物を使ってます(笑)彼は「猫は私にとって家族であり、画家としての人生を支えてくれた恩人だ」と語っていたそうです。

また、第二次世界大戦後、藤田は日本に帰国しますが、フランスに戻る際も、大切にしていた猫を船に乗せて一緒に連れて行きました。当時の船旅は非常に過酷でしたが、彼は猫のために特別な許可を取り、最後まで手元で世話をしたと言います。このエピソードからも、彼がどれほど猫を愛し、その命を尊んでいたかが伝わってきます。このエピソードを見て、ますますこの方のファンになりました。

作品に投影された猫の姿

藤田が描いた猫は、単なる動物の肖像画ではありませんでした。そこには、画家自身の内面や、人間の多面的な感情が深く投影されています。

猫の肖像画として

藤田は、一匹一匹の猫の個性や表情を、まるで人間のポートレートを撮るように丁寧に描きました。彼の作品には、猫の気高さ、愛らしさ、そして時に憂いを帯びた表情が克明に描かれており、猫という存在の深遠さを感じさせます。

人間の分身として

藤田は、猫の孤独や気まぐれさ、そして自由な魂を、自身の生き様や人間の本質を表現する手段として用いました。特に、彼自身の自画像に猫を添えて描くことで、画家と猫の精神的な結びつきを示唆する作品も多く残されています。

幸福の象徴として

ルノワールが描いた絵画のように、藤田の作品でも、猫は家庭の温かさや安らぎを象徴する存在として登場します。女性や子供とともに描かれる猫は、愛と安らぎに満ちた、穏やかな生活の象徴として描かれています。

藤田の代表作である「猫を抱く少女」や「猫と少女」といった作品は、人間と猫の間に流れる、言葉を超えた深い愛情と信頼を表現しています。彼の描く猫たちは、単なるモチーフではなく、藤田の魂そのものであり、見る者の心に温かい感動を与え続けています。

藤田嗣治《自画像》 (1928年)藤田嗣治 生誕140周年記念特設サイトより

私はこの絵が気に入りました。本人の雰囲気もさることながら、背後の猫様の表情がなんともいえない、愛情がこもった感じがしていいですね。

まとめ

画家・藤田嗣治と猫の物語、いかがでしたでしょうか。猫は、孤独な藤田の人生を救い、彼に独自の芸術的才能を与え、そして、藤田はその恩を猫様たちを描くことで永遠の美として作品に残すことで報いました。絵の才能はないですが、最後の自画像に描かれた猫様のような絵を描いてみたい、そんな思いでいっぱいになりました。飽きっぽい猫おばさんですが、ちょっと描いてみようかな(笑)

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