【ねこニュース】「猫をはねても報告義務なし」―イギリス―BBC報道

ねこニュース

猫様について考える時、私たちはしばしば「感情」が前に出てしまいますが、今回取り上げるのは、その感情を刺激する「制度」の話です。
BBCが報じた、英国政府による公式見解――「猫を車ではねた場合、運転者に報告を義務づける計画はない」というニュースは、なぬー‼という気持ちにさせられるイギリスのニュースです。

BBCによると、「猫をはねた場合、法的に報告し、最寄りの動物病院へ連れて行くことを義務化すべきだ」という電子請願が英国議会に提出され、約1万1,000人が署名しました。しかし政府は、「現時点でそのような計画はない」と回答しました。

根拠となっているのは1988年道路交通法です。この法律では、事故後に停止・通報義務が生じる動物として、犬、馬、牛、羊、豚などが列挙されていますが、猫は含まれていません。政府はその理由として、猫は体が小さく衝突に気づきにくいこと、夜明けや夕暮れに活動が集中することなどを挙げ、「違反の立証が困難で、訴追は難しい」と説明しています。

声明では、「愛するペットを道路で失う悲しみは理解している」「英国は思いやりのある国だ」と述べられていますが、法的には、猫をはねてもその場を離れることは違法ではありません。※イギリスではというお話です。

「思いやり」と制度の間にある溝

この政府見解に対し、イギリスの猫の保護団体「Cats Matter」は強く反発しています。
「猫も犬と同じ家族の一員であり、車にひかれた場合には助けを受ける権利がある」
という主張は、感情論というより、現代のペット観を反映したものです。

さっきほど事故後の停止・通報義務が生じる動物として、犬、馬、牛、羊、豚などが列挙されていましたが、犬だって小さい子はいます。大きさを理由にこの中に猫が入らないのは少し矛盾している気がします。(猫おばさんの個人的な感情ですが)

2021年の調査では、猫の負傷原因の約4%が交通事故とされています(イギリスのお話ですね)。割合としては多くなく見えても、その一件一件に、飼い主の生活と感情があります。

日本の場合は?

さて、日本の場合はどうでしょうか。
結論から言えば、結果は似ていても、制度構造は同じではありません。

日本でも、猫は法律上「物」として扱われます。そのため、猫をはねた場合に、必ず刑事責任が問われるわけではありませんし、民事訴訟で勝つのも簡単ではありません。
しかし、日本にはイギリスと決定的に違う点があります。

日本は「事故として記録を残せる」可能性がある

日本では、猫は「飼い主のいる所有物」であるため、警察に通報すれば、物損事故として受理される可能性があります。実際に、交通事故証明書が発行され、事故として公的記録が残るケースも存在します。

この「記録が残る」という点は非常に重要です。

記録が残れば、
・事故として社会に存在が認識される
・保険会社が介入できる
・過失割合の議論が可能になる

つまり日本では、少なくとも「事故」として扱われる入口が残されているのです。

一方イギリスでは…

「事故として扱われない」

イギリスでは、猫は道路交通法上の報告義務対象動物ではありません。
そのため、運転者に警察への報告義務はなく、届け出たとしても、通常は交通事故として処理されません。これは「通報してはいけない」という意味ではありません。しかし、「通報しても事故としてカウントされない」のです。
結果として、猫との衝突は多くの場合、公的な事故記録として残りません。

ここに、日本との決定的な違いがあります。

日本は「記録は残せるが、救済が弱い制度」
イギリスは「そもそも事故として記録されない制度」

制度は「命の数え方」を映す鏡

猫駅長ニタマが社葬で見送られ、「社員」「功労者」として敬意を払われた一方で、道路上では、猫が「事故としてすら数えられない存在」の国もあります。法律はすぐには変わらないかもしれません。しかし、記録されない命は、議論されることもありません。事故として残らない限り、改善も起きないのです。

このニュースは、「イギリスは猫に冷たい」「日本は猫に優しい」という単純な話ではありません。イギリスでは、有名な働く猫様が活躍する国で、猫を軽視しているわけではありません。どの国でも、制度は過去の価値観を引きずります。だからこそ、今の私たちがしっかりと制度について興味を持ち、議論することが必要なのではないかと考えさせられるニュースでした。

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