前回、イギリスの猫カフェが経営難から「猫のいないカフェ」へ転換するというBBCのニュースを紹介しました。3年間で約80匹の猫を新しい家庭へつないできた猫カフェでしたが、猫カフェとしての営業を終了。6匹の猫たちはスタッフやボランティア、常連客などに引き取られ、店舗自体は通常のカフェとして営業を続けることになりました。このニュースで特に気になったのが、猫がいなければカフェは続けられるという点です。猫カフェには通常の飲食店にはない猫の飼養費や医療費などがかかります。
でも、それとは別に以前から気になっていたことがあります。そもそも「猫と触れ合える」ことをサービスにする猫カフェは、猫ファーストと両立できるのでしょうか。
猫カフェに行って感じた違和感
私自身、以前、一般的な猫カフェを訪れたことがあります。そこで気になったのが、おやつを持っているお客さんのところへ猫たちが集まってくる光景でした。もちろん、猫がおやつを欲しがって自分から近づいているとも考えられますし、その様子だけを見て「猫がかわいそう」「ストレスを感じている」と判断することはできません。
それでも私は、少し違和感を覚えました。
猫に会いたい人がお店へ行き、おやつを買い、それを持っている人のところへ猫が集まってくる。猫との触れ合いそのものがサービスになっていることに、「これは本当に猫を中心にした仕組みなんだろうか?」と思ったのです。猫って見知らぬ場所や人にはストレスを感じる生き物。
猫カフェだから猫に触れる。おやつをあげれば猫が寄ってくる。それを当然のサービスにしてしまうスタイルは、少なくとも私が考える猫ファーストとは少し違いました。
猫はいつでも人と触れ合いたいわけではない
実際、猫カフェで暮らす猫たちは、人との接触をどのように感じているのでしょうか。
2025年に発表されたスウェーデンの猫カフェの猫27匹を対象にした研究では、来店客が多いときほど、猫が高い場所や客が入れない猫専用スペースを利用する傾向が確認されました。また、観察時間の44.4%では人との接触がありませんでした。もちろん、人との交流が好きな猫もいます。自分から人のそばへ行く猫もいるでしょう。だから「猫カフェ=猫にとってストレス」と単純に決めることもできません。大切なのは、猫自身が人と関わるかどうかを選べることなのだと思います。
寝ていたければ寝る。隠れたければ隠れる。人のいない場所へ行きたければ移動する。猫ファーストを考えるなら、「猫と触れ合える環境」だけではなく、猫に「触れ合わない自由」があることも必要です。
猫ファーストと「お客さんの満足」は両立できる?
ここで難しくなるのが、猫カフェというビジネスとの両立です。猫が自由に逃げられる場所を作る。客が入れないスペースを設ける。嫌がっている猫には触らせない。必要なら来店人数を制限する。猫にとっては大切なことです。
でも、「猫と触れ合いたい」と思って来店した人からすれば、「せっかく猫カフェに来たのに猫に触れなかった」と感じる可能性があります。反対に、お客さんの満足度を優先して猫との接触機会を増やせば、猫が休みたいときに休めるのか、逃げたいときに逃げられるのかという問題が出てきます。つまり、「猫と触れ合えること」を商品にするほど、人間の満足と猫の都合がぶつかる可能性があるということです。
保護猫カフェの場合は、さらに保護や譲渡を継続するための人手や費用も必要になります。民間の保護猫活動をどのように継続していくのかについては、以前こちらの記事でも考えました。
今回は、その運営面とは少し違う「猫から見た猫カフェ」という視点で考えています。
私がいいと思ったのは「猫に触れない猫カフェ」
一般的な猫カフェで違和感を感じた私が、その後「このスタイルはいいな」と思った猫カフェがあります。大分市にある「かぎのしっぽ SAKURAZAKA Café」です。ここは一般的な猫カフェとは少し違い、公式にも「保護ネコ鑑賞カフェ」とされています。
猫たちが暮らすスペースとカフェの客席はガラスで仕切られ、お客さんは猫たちに直接触れませんが、ガラスを挟んでおもちゃで猫たちと遊んだりできます。ガラス越しに猫たちの姿を眺めるスタイル、私は、この考え方がとても好きでした。猫は不特定多数のお客さんに触られることを前提にせず、自分たちのスペースで過ごすことができます。人間は猫の姿を眺めて楽しみ、猫は「接客」をしなくていい。
猫ファーストを突き詰めて考えると、「鑑賞型」というのはひとつの理想形なのではないか。私はそう思っています。そして、この猫カフェの考え方が好きだったこともあり、ここにいた保護猫の中から我が家へ迎えたのが、もちでした。
まとめ
猫カフェそのものが猫にとって悪い場所というわけではありません。人との交流を好む猫もいますし、保護猫と新しい家族が出会う場所として機能している猫カフェもあります。ただ、「猫と触れ合えること」をサービスにするのであれば、猫には同時に「触れ合わない自由」が必要です。そして今、改めて猫カフェと猫ファーストについて考えてみても、猫が接客することを前提にしない「鑑賞型」は、猫ファーストを突き詰めたひとつの形なのではないかと思います。
でも、「かぎのしっぽ」が興味深いのは、猫に触れないことだけではありません。猫たちのお世話、就労支援、カフェ、物販などを組み合わせた運営の仕組みにも特徴があります。積極的に猫を保護し続ける施設ではなく、縁があってやってきた猫たちをお世話しながら、新しい家族との出会いにつなげていく場所です。次回は、もちも暮らしていたこの場所が、猫たちの暮らしと譲渡をどのような仕組みで支えているのかを紹介したいと思います。


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