「猫のフン」紛争がついに高等法院へ:英国で物議を醸す「自由な徘徊」と「公害」の境界線

ねこニュース

英国のウェールズで発生した「隣人の猫のフン」を巡る法的紛争が、ついに高等法院(日本の高等裁判所に相当)にまで発展し、大きな注目を集めています。

日本でも野良ネコさんのフンやおしっこ問題ありますよね。日本では(もちろんイギリスもだと思いますが)室内飼い推奨なので、徘徊する権利を認めるというフレーズは驚きなのですが、イギリスでは猫には徘徊する権利があるとしているようですね。このニュースは、単なる近隣トラブルを超え、「猫の自由に徘徊する権利(Right to Roam)」と「公衆衛生上のリスク」の境界線を問う重要な裁判となりました。詳細をまとめてみました。

騒動の始まり:「毎日、恐怖と共に目が覚める」

ウェールズ・ベドワスに住むリチャード・ウィリアムソン氏は、長年、隣人が飼っている複数の猫が自分の庭にフンをすることに悩まされてきました。彼は地元ケアフィリ議会に対し、「猫が自由に徘徊する権利は認めるが、法定の公害(Statutory Nuisance)を引き起こしたり、環境衛生上のリスクをもたらしたりする権利まではない」と強く訴えました。

ウィリアムソン氏が特に懸念していたのは、生まれたばかりの赤ちゃんの健康です。 「もうすぐ庭で遊ぶようになる新生児がいる親として、猫の排泄物に関連する健康リスクを非常に危惧している」と、彼は裁判資料の中で述べています。

ウィリアムソン氏の精神的苦痛は限界に達しており、議会へのメールにはこう綴られていました。「毎日、今日はまたどれだけの猫のフンを掃除しなければならないのかという恐怖と共に目が覚める。」

 自治体の言い分:猫には「徘徊の権利」がある

苦情を受けたケアフィリ議会は調査を行いましたが、最終的に「法的措置は取れない」との結論を下しました。その理由は、英国の法律における猫の特殊な立ち位置にあります。

議会の主張をまとめると、以下の通りです。

徘徊の自由: 猫は、犬や家畜のように法律によって徘徊を厳しく制限されているわけではない。

飼育環境の確認: 議会職員が飼い主の自宅を訪問した際、適切な猫砂トレーが設置されており、猫が家の中でも排泄できる環境にあることを確認した。

福祉の観点: 猫の飼い主には「動物福祉」への配慮が求められる。外に出ることに慣れている猫を閉じ込めることは、猫の福祉を損なう可能性がある。

議会側は「適切に飼育されている以上、外での排泄を完全にコントロールすることは不可能であり、それは法的責任を問う対象にはならない」との立場をとったのです。

高等法院の判断:議会が無視した「問題の核心」

しかし、この事態を重く見た高等法院のジャーマン判事(Judge Jarman KC)は、議会に対して「苦情の再検討」を命じる判決を下しました。

判事は、議会の調査が「問題の核心」を突いていなかったと指摘しました。その核心とは、「その排泄物の堆積が、1990年環境保護法第79条に基づく『法定の公害』にあたるかどうか」という点です。

判決のポイント

法律の解釈: 議会は「猫がどう飼われているか」や「徘徊する権利」ばかりに焦点を当てていた。しかし、法律が求めているのは「その結果として生じている状況が、健康を害する恐れがあるか、あるいは生活の平穏を著しく乱す公害か」を判断することである。

再調査の必要性: 議会は、単に飼い主が猫砂を用意しているかを確認するだけでなく、ウィリアムソン氏の庭に堆積したフンが実際に「公衆衛生上のリスク」となっているかを調査すべきだった。

判事は、「この判決は最終的な結果を予測するものではない」と前置きしつつも、議会の判断プロセスに不備があったことを明確に認めました。

英国における「猫の法律」と健康リスクの背景

この裁判がこれほどまでに複雑化している背景には、英国における「猫の権利」の強さがあります。

犬と猫の法的違い

英国では、犬の糞放置は罰金の対象となりますが、猫には「Right to Roam(徘徊する権利)」が認められており、飼い主が猫の行動を24時間監視する法的義務はありません。

衛生上のリスク

ウィリアムソン氏が懸念する「赤ちゃんの健康リスク」には、トキソプラズマ症などが含まれます。これは猫のフンを介して感染する寄生虫疾患で、特に免疫力の低い乳幼児にとっては、深刻なリスクとなる可能性があります。

まとめ

今回の判決は、猫の飼い主にとって「自由に外に出して良い」という権利が、隣人の「清潔な環境で暮らす権利」を完全に上回るわけではないことを示唆しています。今後はケアフィリ議会が再調査を行い、実際にどれほどのフンが、どの程度の頻度で放置されているのか、それが「公害」の基準を満たすのかを科学的・衛生的に判断することになります。

猫飼いとしては、イギリスでは徘徊する権利を持つ猫様が、日本ではどのような立場なのか、日本の法律や裁判の判例についても調べてみたいと思います。

(情報元:BBC News, Cardiff High Court Documents, 1990年環境保護法関連報道に基づく)

コメント

タイトルとURLをコピーしました