世界が愛する「冒険猫」スージー、ついにブロンズ像で歴史に刻まれる

ねこニュース

イギリス南西部、ドーセット州の古都ドーチェスター。かつてローマ帝国が「ドゥルノヴァリア」と呼んだこの歴史ある町で、今、一匹の猫が伝説になろうとしています。
BBCのニュースをご紹介します。
BBC:https://www.bbc.com/news/articles/c1wzlzg0vp0o

主役は、スージー(Susie)。SNSで1万人以上のフォロワーを持ち、町の経済やチャリティに多大な貢献をしてきた彼女の功績を称え、等身大のブロンズ像が建立されることが決定しました。なぜ、一匹の飼い猫がこれほどまでに愛され、町の歴史の一部になろうとしているのか。その物語を紐解きます。

始まりは「小さな勘違い」と「魔法の言葉」

スージーの物語が大きく動き出したのは、2023年に彼女がドーチェスターに引っ越してきたときのことです。飼い主のクロン夫妻と、その娘であるジェニー・グレーブスさんと共に移住してきたスージーにとって、新しい家は単なる拠点に過ぎませんでした。

スージーは極めて自由を愛する猫でした。毎日自宅を飛び出し、ドーチェスターの目抜き通りや路地裏、さらにはパブやスーパーマーケットまで、まるで自分の庭のように歩き回りました。しかし、当初は町の人々は彼女を知りません。独りで歩く姿を見て「迷い猫ではないか」と心配した住民たちが、保護しようとしたり首輪の連絡先に電話をかけたりすることが相次ぎました。ジェニーさんの電話は、目撃情報の連絡で鳴り止まない日々が続いたといいます。

このままではスージーの自由が制限されるだけでなく、住民にも心配をかけ続けてしまう。そこで家族は、名札を新しいものに交換しました。そこに刻まれたのは、今や彼女の代名詞となったこの言葉です。

「スージー:迷子ではありません。ただの冒険家です(Not lost, just adventurous.)」

この一文が、スージーを「かわいそうな迷い猫」から「勇敢な町の探検家」へと昇格させました。この魔法のような言葉によって、住民の視線は「心配」から「親愛」へと劇的に変わったのです。

町全体が彼女のリビングルーム

名札の効果もあり、スージーの行動範囲はさらに広がりました。彼女の「パトロール」はもはや日常の光景となり、町中の至る所に彼女の「行きつけ」が存在します。

地元のパブではお気に入りの椅子に陣取って昼寝をし、スーパーマーケットでは商品の棚の間を悠然と歩き、買い物客に思いがけない癒やしを与えています。驚くべきことに、彼女は事務所が入った建物の4階まで自力で階段を登り、働く人々の中に混じってデスクでくつろぐこともあります。

Facebookの専用グループには、毎日誰かが最新情報を投稿しています。「今日は銀行にいた」「靴屋の前で日向ぼっこをしていた」といった目撃情報が、地域住民の間に温かな交流を生んでいます。SNSというデジタルの世界が、スージーを介して現実のコミュニティの絆を強めているのです。

ジェニーさんは病院のコンサルタントですが、診察室でもスージーの話題が出ない日はありません。「外来クリニックで診察するたびに、患者さんからスージーのことを聞かれます。彼女のおかげで、出会うことのなかった多くの人々と繋がることができました」と語ります。スージーは、孤独を感じがちな現代において、見知らぬ人同士を繋ぐ「共通の話題」という大きな役割を果たしているのです。

歴史と現代が交差する「ローマ風ブロンズ像」プロジェクト

今回のブロンズ像建立は、ある匿名の寄付者からの申し出で実現しました。この寄付者は古代史に詳しく、ドーチェスターの深い歴史と、現代のアイコンであるスージーを融合させることを提案しました。

BBC記事より

ドーチェスターは、紀元前のローマ時代に栄えた非常に歴史ある町です。スージーの像には、その歴史へのオマージュとして特別な意匠が凝らされます。

まず、首輪は「ローマ風」のデザインになります。当時の猫が身に付けていたとされる美しいガラスビーズをあしらったものを再現します。さらに、足元には実在のローマ時代のタイルを模したものが設置され、そこにはスージー本人の肉球スタンプが刻印される予定です。

土台には、世界遺産「ジュラシック・コースト」の一部であるポートランド石が使用されます。この石には本物の化石が含まれており、何億年という時間と、現代のスージーが交差する象徴となります。

制作を担当する彫刻家アマ・メネック氏は、この像をあえて「子供の目線」の高さに設置する計画です。通りかかる人々がスージーの像と目を合わせ、鼻先を撫でることができる。それは、スージーが実際に町で人々と触れ合っている姿そのものを形にしたいという、制作陣の願いの表れです。

猫が動かした「数千ポンド」の善意

スージーの人気は、単なるブームに留まらず、社会を動かす力を持っています。彼女をモチーフにした活動が、多くのチャリティ団体に利益をもたらしてきました。

一つ目は、児童書『Not Lost』です。スージーが建物の4階に迷い込んだ実話を元にした物語で、売上は学習障害を持つ人々を支援する団体へ活用されました。 二つ目は、2026年版カレンダーです。地元住民が撮影したスージーの写真で構成されたこのカレンダーは、発売後すぐに完売し、2,600ポンド(約50万円)以上の利益が自殺防止団体「サマリア人会」に全額寄付されました。 さらに、地元のアーティストが描いたポストカードは、地域の猫の保護活動を支える継続的な資金源となっています。

ジェニーさんは、「像を建てるなんてクレイジーだとも思いますが、これが町の活気に繋がり、人々を笑顔にするのであれば素晴らしいことです」と語っています。スージーは、自らの肉球一つで、人々の孤独を救い、困難にある人々を助けるための架け橋となったのです。

まとめ

ドーチェスターのサウス・ストリートに設置されるスージーのブロンズ像は、単なる猫の彫刻以上の意味を持ちます。それは、一匹の動物が持つ「コミュニティを癒やし、団結させる力」を具現化したものです。「迷子ではなく冒険家」として生きる彼女の精神は、多くの人々に勇気を与え、チャリティを通じて具体的な救いの手へと変わりました。日本の家猫ちゃんにはできないことですが、街の人たちを繋ぐほっこりするニュースでした。

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