福岡市では野良猫の不妊・去勢手術が無償?飼い主のいない猫への支援を調べてみた

猫様との暮らし

前回、福岡市には飼い猫の不妊・去勢手術に対する助成制度があることを紹介しました。飼い猫の場合、2026年度は1頭につき7,500円が助成されます。では、飼い主のいない猫についてはどうなのでしょうか。調べてみると、こちらは飼い猫とは違った仕組みで、不妊・去勢手術を無償で行う取り組みがありました。今回は、福岡市の飼い主のいない猫への支援について調べてみます。

飼い主のいない猫は不妊・去勢手術が無償

福岡市では、飼い主のいない猫や多頭飼育問題の猫を対象とした、不妊・去勢手術の支援事業を行っています。この事業を行っているのは、福岡市、福岡市獣医師会、動物関係団体などで構成する「飼い主のいない猫等の不妊去勢手術推進協議会」です。事業に協力する動物病院で、対象となった猫の不妊・去勢手術を無償で受けることができます。ただし、無償となるのは不妊・去勢手術と耳カットです。堕胎やノミ・ダニ駆除などの処置、検査などが必要になった場合、その費用は自己負担となります。

2024年度には690頭を支援

実際にどのくらいの猫がこの制度を利用しているのでしょうか。福岡市の2024年度の実績を見ると、飼い主のいない猫については、

* 市や関係団体などが対象地域を選定する「選定枠」:548頭
* 市民が自主的に取り組む「公募枠」:142頭

合計690頭の不妊・去勢手術が支援されています。単に制度が用意されているだけではなく、実際にかなりの数の猫の手術に利用されていることが分かります。

「TNR」って何?

飼い主のいない猫への対策でよく使われるのが、TNRという言葉です。TNRとは、

* Trap=捕獲する
* Neuter=不妊・去勢手術をする
* Return=元の場所に戻す

という活動のことです。飼い主のいない猫を捕獲して動物病院へ連れて行き、不妊・去勢手術をしたあと、捕獲した場所へ戻します。「せっかく捕まえたのに、また外へ戻すの?」と思う人もいるかもしれません。しかし、TNRでは猫をどこかへ収容することではなく、繁殖を抑えることが目的です。すべての飼い主のいない猫を保護施設などで受け入れることは現実的ではありません。そこで、今いる猫に不妊・去勢手術を行い、新たな子猫が生まれることを防いでいくという考え方です。福岡市でも、飼い主のいない猫などの繁殖を抑制するため、TNR活動などへの支援を行っています。

なぜ耳をカットするの?

TNRを行った猫を見かけると、耳の先がV字型にカットされていることがあります。

いわゆる「さくら耳」です。

これは、その猫がすでに不妊・去勢手術を受けていることを外見から確認するための目印です。耳カットは不妊・去勢手術の際に麻酔下で行われます。手術済みであることが分かれば、同じ猫を再び捕獲して動物病院へ連れて行くことを避けることができます。一見すると少し驚くかもしれませんが、屋外で暮らす猫が手術済みであることを確認するために重要な役割があります。

多頭飼育問題の猫も支援対象

この制度では、飼い主のいない猫だけでなく、多頭飼育問題の猫も支援対象となっています。ただし、「猫をたくさん飼っていれば無料で手術してもらえる」という制度ではありません。福岡市では、複数の猫を飼育する中で適切な飼育管理ができなくなり、飼い主の生活や猫の状態、周辺の生活環境などに悪影響が生じているケースについて、手術を支援しています。2024年度には5件、94頭の手術が行われました。多頭飼育崩壊は、最初から何十匹もの猫を飼おうとして始まるとは限りません。不妊・去勢手術をしないまま繁殖し、飼い主だけでは世話をしきれない数まで増えてしまうこともあります。問題がさらに大きくなる前に繁殖を止めることも、猫と飼い主の双方を支える対策のひとつといえそうです。

飼い猫への助成とは何が違う?

前回紹介した飼い猫への制度と比べると、支援方法がかなり違います。飼い猫の場合は飼い主がいるため、不妊・去勢手術などの費用の一部を助成します。一方、飼い主のいない猫の場合は、TNRなどによって地域での繁殖を抑えるため、対象となった猫の不妊・去勢手術と耳カットを無償で行います。どちらにも共通しているのは、望まない繁殖を防ぐことです。福岡市では、飼い主のいない猫や多頭飼育問題に起因するトラブルだけでなく、動物愛護管理センターへの収容や殺処分といった問題の解決も、この事業の目的として挙げています。猫が増えて問題が大きくなってから対応するだけではなく、その前の段階で繁殖を抑えることも重要ということなのでしょう。

TNRだけですべて解決するわけではない

もちろん、不妊・去勢手術をすれば、地域の猫をめぐる問題がすべて解決するわけではありません。手術後も猫はその地域で暮らすため、餌やりや糞尿、近隣住民との関係などの問題が残る場合があります。猫が好きな人もいれば、猫が苦手な人もいます。そのため、TNRは猫を守るためだけの活動として考えるのではなく、猫が増え続けることによって起こる地域の問題を抑えていく方法のひとつとして見る必要がありそうです。

まとめ

前回紹介した飼い猫への助成制度と合わせて見ると、福岡市では「保護された猫をどうするか」だけではなく、そもそも飼えない猫や行き場のない猫を増やさないための対策も行われていることが分かります。すべての猫を保護することだけが、猫を助ける方法ではありません。保護猫の問題を考えると、どうしても「今いる猫をどう助けるか」に目が向きます。でも、その一方で、これ以上行き場のない猫を生み出さないことも同じくらい大切です。今回、飼い猫と飼い主のいない猫、両方の制度を調べてみて、猫を取り巻く問題は「保護」だけではなく、その前の段階で防ぐことも必要なのだと改めて感じました。猫を見つけたら保護する、だけではなく、増やさないために利用できる仕組みを知っておく。それも、私たちにできることのひとつなのではないでしょうか。

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