前回の記事では、「猫カフェは猫ファーストと両立できるのか?」について考えました。そこで紹介したのが、大分市にある「かぎのしっぽ SAKURAZAKA Café」。ニャンコ希望が丘が運営しています。猫たちが過ごすスペースをガラス越しに眺める「保護ネコ鑑賞カフェ」で、お客さんは猫たちに直接触れません。私は以前からこの猫カフェの考え方が好きで、ここにいた保護猫の中から我が家へ迎えたのが、もちでした。でも、私がいいと思っているのは「猫に触れない」という部分だけではありません。猫を次々に保護するのではなく、縁があってやってきた猫たちをきちんとお世話し、新しい家族へつなげていく。そして、そのための人の仕事や事業も組み合わせる。今回は、そんな「ニャンコ希望が丘」の仕組みについて紹介します。
「保護し続けない」という考え方
保護猫の問題を考えていると、「もっとたくさんの猫を保護できれば」と考えてしまいがちです。でも、施設にも人にもお金にも限界があります。猫を受け入れれば、毎日のフードや猫砂だけでなく、健康管理や医療、掃除、施設の維持などが必要になります。新しい猫を保護し続ければ、その負担も増え続けます。だから私は、保護する数を増やし続けることだけが、猫を助ける方法ではないと思っています。「ニャンコ希望が丘」は積極的に猫を保護し続けることを目的とした場所ではありません。縁があってやってきた猫たちを大切にお世話しながら、新しい家族との出会いにつなげていく。定期的に譲渡会「にゃんむすび」も開催されています。
私は、この考え方にも共感しています。
無理に受け入れ続けて施設そのものが維持できなくなってしまえば、すでにそこで暮らしている猫たちにも影響します。「何匹保護したか」だけではなく、「今いる猫たちを最後まできちんと支えられるか」。猫ファーストを考えるなら、そこも大切なのではないでしょうか。
「かぎのしっぽ」と「ニャンコ希望が丘」
「かぎのしっぽ SAKURAZAKA Café」はカフェの名前です。そのカフェからガラス越しに眺められる猫たちのプレイルームが「ニャンコ希望が丘」です。運営する株式会社CFCが掲げているコンセプトは、「障がい福祉×動物福祉×カフェ×雑貨ショップ×協力していただける動物病院」というもの。猫の譲渡だけを単独で行うのではなく、就労支援、カフェ、物販など複数の事業や活動が組み合わされています。
猫のお世話を「仕事」にする
特に特徴的なのが、就労支援との組み合わせです。就労継続支援B型「ワークプレイスbホープ」では、内職やパソコン作業、手工芸品の制作などと並んで、猫のお世話をする「ネコ業務」が仕事として組み込まれています。
一方、就労継続支援A型「クリエイトプレイスAホープ」では、「かぎのしっぽ」のホールや厨房、調理なども仕事になっています。店内では、就労支援施設で制作されたものや地域のハンドメイド作家による雑貨なども販売されています。
猫のお世話、カフェ、制作、販売。
猫たちを支える場所と、人が働く場所がひとつの仕組みの中につながっているのです。以前、保護猫をめぐる問題について書いた記事でも、就労継続支援B型と猫のお世話を組み合わせる方法について触れました。
実際に猫たちが暮らす環境もよかった
私が「ニャンコ希望が丘」に好印象を持っているのは、仕組みだけではありません。普段はガラス越しに見る猫たちの部屋ですが、譲渡会のときには中に入ることができ、私も実際に入ったことがあります。多くの猫が暮らしているにもかかわらず、気になる臭いがほとんどなかったことを覚えています。室内には空気清浄・脱臭のための設備なども設置されていました。猫たちが毎日過ごす環境にも配慮されている。私がこの場所をいいと思った理由のひとつです。
もちになる前は「タキ」でした
そして、ここで暮らしていた猫の一匹が、我が家のもちです。当時の名前は「タキ」。譲渡の際には、施設で暮らしていた頃の写真もいただきました。今よりずいぶん若くてスリムです(笑)。

一緒に写っている大きな茶トラの猫は「さんちゃん」。私が初めてもちに会ったときも、さんちゃんの近くにいました。その後、我が家へ迎えるまでの間に大きく体調を崩し、動物病院に長期間入院することに。無事に回復してから、我が家へやってきました。
猫を新しい家庭へつなぐまでには、毎日のお世話だけでなく、こうした医療が必要になることもあります。だからこそ、受け入れる数を増やすこと以上に、縁があってやってきた一匹一匹をきちんと支え、次の暮らしへつなげることも大切なのだと思います。
猫を働かせるのではなく、人の仕事を作る
前回の記事で紹介したように、「かぎのしっぽ」では猫たちはガラスの向こうで暮らし、不特定多数のお客さんに触られる「接客」をする必要がありません。一方、人の側には猫のお世話、カフェ、調理、制作、販売などの仕事があります。猫に働いてもらって売上を作るのではなく、猫たちの暮らしを中心に、その周囲に人の仕事や事業を作る。さらに、猫を際限なく受け入れるのではなく、今いる猫たちの暮らしと譲渡を支える。私は、この二つが組み合わされているところに「ニャンコ希望が丘」の良さがあると思っています。
まとめ
猫を助けようと思えば、できるだけ多くの猫を保護したいと考えるのは自然なことかもしれません。でも、受け入れられる猫の数には限界があります。「ニャンコ希望が丘」と「かぎのしっぽ」では、その猫たちの暮らしを、就労支援、カフェ、物販など複数の仕組みが支えています。猫は接客をせず、人には猫のお世話やカフェなどの仕事がある。そして、猫たちはそれぞれの新しい家族へつながっていく。
たくさん保護することより、今いる猫を幸せにして次へつなぐ。
私は、そんな考え方も猫ファーストのひとつではないかと思っています。
※アイキャッチ画像は、現在のふくよかなもち様です(笑)

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